「最近、うちの子、水をよく飲むようになった気がする…」
「なんだか元気がないかも…」
もしそう感じたら、それは腎臓病の初期サインかもしれません。
腎臓病は犬・猫ともに非常に多い病気で、特に高齢になると発症リスクが高まります。
しかし、初期段階では症状がほとんど現れないため、気づいたときにはすでに進行しているケースが少なくありません。
42年の獣医臨床経験から、ペットの腎臓病の早期発見ポイントと、飼い主さんができる日常的なチェック方法をお伝えします。
腎臓病とは?
腎臓の役割
腎臓は体の「ろ過装置」です。
主な機能:
- 血液中の老廃物をろ過して尿として排出
- 体内の水分・電解質バランスを調整
- 血圧の調整
- 赤血球を作るホルモンの分泌
腎臓が正常に働かなくなると、老廃物が体内に蓄積し、様々な症状が現れます。
急性腎臓病と慢性腎臓病
急性腎臓病
- 突然発症(数時間〜数日)
- 原因:中毒、感染症、尿路閉塞など
- 早期治療で回復の可能性あり
慢性腎臓病
- ゆっくり進行(数ヶ月〜数年)
- 原因:加齢、遺伝、長期的なダメージ
- 一度壊れた腎臓は元に戻らない
- 進行を遅らせることが治療目標
高齢のペットに多いのは慢性腎臓病です。
なぜ腎臓病は気づきにくいのか
腎臓には予備能力がある
腎臓は、全体の約75%が壊れてからようやく症状が現れ始めます。
つまり、飼い主さんが「おかしいな」と気づいた時には、すでにかなり進行しているのです。
犬や猫は不調を隠す
特に猫は、野生の本能から体調不良を隠す傾向があります。
「いつもと変わらない」ように見えても、実は体の中では病気が進行していることがあるのです。
だからこそ、早期発見のための知識と定期的なチェックが重要です。
腎臓病の早期発見サイン
最も重要なサイン:多飲多尿
多飲多尿とは:
- 水を飲む量が増える(多飲)
- おしっこの量・回数が増える(多尿)
腎臓の機能が低下すると、尿を濃縮する能力が失われ、薄い尿が大量に出るようになります。
その結果、体が脱水状態になり、水をたくさん飲むようになるのです。
チェックポイント:
- 水のボウルを1日に何度も満たしている
- トイレシートの交換回数が増えた
- おしっこの色が薄くなった(ほとんど透明)
- 猫の場合、トイレに行く回数が増えた
その他の初期サイン
食欲の変化
- 食べる量が減る
- 好きだったおやつに興味を示さない
- 食べムラが出る
体重の減少
- 痩せてきた
- 筋肉が落ちてきた
毛づやの悪化
- 毛がパサパサになる
- ツヤがなくなる
- 毛並みが悪くなる
元気がない
- 寝ている時間が増えた
- 遊ばなくなった
- 散歩を嫌がる(犬の場合)
口臭
- アンモニア臭がする
- 尿のような臭い
これらの症状は、他の病気でも見られることがあります。
しかし、複数の症状が同時に現れた場合は、腎臓病の可能性が高まります。
犬と猫の症状の違い
犬の場合
犬は比較的症状が分かりやすい傾向があります。
気づきやすいサイン:
- 水をガブガブ飲む
- おしっこの量が明らかに増える
- 散歩中に何度もおしっこをする
- 夜間のトイレが増える
進行すると:
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 脱水症状
- ふらつき
猫の場合
猫は症状が非常にわかりにくいのが特徴です。
気づきにくい理由:
- もともと水をあまり飲まない
- トイレを隠す習性がある
- 不調を隠す本能がある
猫特有のサイン:
- トイレの砂が以前より濡れている
- トイレに行く回数が増える
- 食欲不振・体重減少が唯一のサインのこともある
- グルーミングが減り、毛がボサボサになる
猫の場合、「なんとなく元気がない」「少し痩せた」という小さな変化でも要注意です。
腎臓病のステージと症状
腎臓病は進行度によって4つのステージに分類されます。
ステージ1(初期)
腎機能:約75%以上残存
症状:ほとんどなし
- 血液検査では異常が出ないこともある
- 尿検査や画像検査で発見されることがある
この段階での発見が理想的です。
ステージ2(軽度)
腎機能:約50〜75%残存
症状:
- 多飲多尿が目立ち始める
- おしっこの色が薄い
- 食欲が少し落ちる
- 体重がやや減少
飼い主さんが気づき始めるのはこの段階が多い
ステージ3(中等度)
腎機能:約25〜50%残存
症状:
- はっきりとした食欲不振
- 嘔吐が増える
- 体重減少が顕著
- 元気がない
- 口臭が強くなる
ステージ4(末期)
腎機能:25%以下
症状:
- ほとんど食べない
- 頻繁な嘔吐
- 脱水症状
- ぐったりしている
- 痙攣(けいれん)
- 昏睡状態
この段階では治療が非常に困難です。
自宅でできる腎臓病チェック
1. 飲水量のチェック
方法:
- 朝、ペットの水入れに決まった量の水を入れる(例:500ml)
- 夜、残った水を測る
- 飲んだ量を計算
正常な飲水量の目安:
- 犬:体重1kgあたり50〜60ml/日
- 猫:体重1kgあたり40〜50ml/日
例:
- 5kgの犬:250〜300ml/日
- 4kgの猫:160〜200ml/日
この量を大きく超えている場合は要注意です。
2. おしっこのチェック
犬の場合:
- トイレシートの濡れ具合
- 散歩中のおしっこの回数
- おしっこの色(薄くなっていないか)
猫の場合:
- トイレの砂の固まり方(大きな塊が増えていないか)
- トイレに行く回数
- トイレの後の砂の濡れ具合
3. 体重のチェック
月1回は体重を測りましょう。
注意すべき体重減少:
- 1ヶ月で5%以上の減少
- 3ヶ月で10%以上の減少
例:5kgの猫の場合
- 1ヶ月で250g以上減少 → 要注意
- 3ヶ月で500g以上減少 → 要注意
4. 食欲のチェック
毎日のフードの量を把握しましょう。
注意すべきサイン:
- いつもより食べ残す日が増える
- 好物にも興味を示さない
- 食べるのに時間がかかる
5. 元気度のチェック
いつもと違う様子:
- 寝ている時間が増えた
- 遊びに反応しない
- 隠れることが増えた(猫)
- 散歩を嫌がる(犬)
腎臓病の診断方法
動物病院では、以下の検査で腎臓病を診断します。
血液検査
BUN(血中尿素窒素)
- 老廃物の一つ
- 腎機能が低下すると上昇
クレアチニン
- 筋肉の代謝産物
- 腎機能が低下すると上昇
SDMA(対称性ジメチルアルギニン)
- 早期発見に有効な新しい指標
- 腎機能が25%低下した段階で上昇
- クレアチニンより早く異常が検出できる
尿検査
尿比重
- 尿の濃さを示す
- 腎臓病では低下する(薄い尿)
尿タンパク
- 尿にタンパク質が漏れ出ていないかチェック
尿沈渣
- 尿中の細胞や結晶を確認
画像検査
超音波検査
- 腎臓の大きさ、形状を確認
- 腎臓が小さくなっていないか(慢性腎臓病)
- 腫れていないか(急性腎臓病)
X線検査
- 腎臓の位置、サイズ
- 結石の有無
血圧測定
腎臓病では高血圧を伴うことが多いため、血圧測定も重要です。
定期健康診断の重要性
腎臓病は症状が出る前に発見することが最も重要です。
推奨される健康診断の頻度
若い犬・猫(7歳未満)
- 年1回
中高齢の犬・猫(7〜10歳)
- 年1〜2回
高齢の犬・猫(10歳以上)
- 年2回(6ヶ月ごと)
特に猫は7歳を過ぎたら必ず年1〜2回の健康診断を受けましょう。
健康診断で受けるべき検査
基本セット:
- 血液検査(BUN、クレアチニン、SDMA)
- 尿検査
- 血圧測定
必要に応じて:
- 超音波検査
- X線検査
腎臓病になりやすい犬種・猫種
犬
腎臓病のリスクが高い犬種:
- シー・ズー
- ミニチュア・シュナウザー
- コッカー・スパニエル
- ビーグル
- ゴールデン・レトリーバー
猫
すべての猫が腎臓病のリスクがあります。
特に:
- 15歳以上の猫の約30〜40%が腎臓病
- 高齢猫の死因の第1位
特定の猫種でリスクが高い:
- アビシニアン
- ペルシャ
- ロシアンブルー
- メインクーン
腎臓病の治療
残念ながら、慢性腎臓病は完治しません。
しかし、適切な治療と管理で進行を遅らせ、寿命を延ばし、QOL(生活の質)を維持できます。
治療の目標
- 進行を遅らせる
- 症状を緩和する
- 合併症を防ぐ
- 快適に過ごせるようにする
主な治療法
食事療法(最も重要)
- 腎臓病専用の療法食
- タンパク質、リン、ナトリウムを制限
- 進行を大幅に遅らせる効果
輸液療法
- 点滴で脱水を改善
- 老廃物の排出を促す
- 初期は週1〜2回、状態によって頻度調整
内服薬
- 血圧を下げる薬
- リンの吸着剤
- 吐き気止め
- 貧血の薬
サプリメント
- 活性炭(老廃物の吸着)
- オメガ3脂肪酸(腎保護作用)
早期発見の重要性
ステージ1〜2で発見できれば:
- 食事療法だけで数年間は良好な状態を維持できる可能性
- QOLを保ちながら長生きできる
ステージ3〜4で発見されると:
- 頻繁な通院が必要
- 入院治療が必要になることも
- 予後が厳しい
早期発見で、愛犬・愛猫の寿命は大きく変わります。
腎臓病を予防するために
1. 適切な水分補給
犬の場合:
- 常に新鮮な水を用意
- 散歩後は必ず水を飲ませる
- 複数の場所に水入れを設置
猫の場合:
- 流れる水を好む猫には自動給水器
- 複数の場所に水入れを設置
- ウェットフードで水分補給
- 水に興味を持たせる工夫(氷を浮かべるなど)
2. 適切な食事
高品質なフード
- 年齢に合ったフード
- 過度な高タンパク食は避ける
- 添加物の少ないフード
肥満を防ぐ
- 適正体重の維持
- おやつの与えすぎに注意
3. ストレスを減らす
特に猫はストレスで腎臓病のリスクが高まります。
ストレス要因:
- 引っ越し
- 新しいペットの導入
- 環境の変化
- トイレの数が足りない(猫)
4. 定期的な歯のケア
歯周病は腎臓に悪影響を与えます。
- 毎日の歯磨き
- 定期的な歯科検診
- 必要に応じて歯石除去
5. 定期健康診断
やはり最も重要なのは定期健康診断です。
こんな時はすぐ動物病院へ
以下の症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。
緊急性が高い症状:
- 24時間以上おしっこが出ない
- 何度も嘔吐する
- ぐったりして動かない
- 呼吸が荒い
- 痙攣(けいれん)
- 口から強い尿臭がする
早めの受診が必要な症状:
- 水を飲む量が明らかに増えた
- おしっこの量・回数が増えた
- 2日以上食欲がない
- 体重が急に減った
- 元気がない日が続く
ヒロ小動物研究所のオンライン相談
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相談内容:
- 腎臓病の初期サインの見極め
- 日常生活での注意点
- 食事の選び方・与え方
- セカンドオピニオン
- 今後の見通し
料金:
初回相談(30分):5,000円
継続相談(30分):4,000円
全国どこからでも、ご自宅からご相談いただけます。
お問い合わせは、当サイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
まとめ
腎臓病は、早期発見が何よりも重要です。
日常的にチェックすべきポイント:
- 水を飲む量
- おしっこの量・回数・色
- 食欲
- 体重
- 元気度・毛づや
早期発見のために:
- 7歳以上は年1〜2回の健康診断
- 血液検査(SDMA含む)と尿検査
- 小さな変化も見逃さない
腎臓病は完治しませんが、早期発見・適切な治療で進行を遅らせ、愛犬・愛猫が快適に長生きできます。
「いつもと違うかも」と感じたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
あなたの観察力が、愛犬・愛猫の命を救います。


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